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ペットお役立ち情報 インストラクター高井牧の海外レポート

2006.7.14 イアンダンバー氏訪問記(後編)〜“褒めるしつけ”について〜

前回のインタビューの続きです。

○心理学に基づく犬のトレーニングについて
高井(以下タ):先生はトレーニングに心理学を取り入れることで世界に大きな流れを作られましたね。
日本でもポジティブ・トレーナーという、心理学に基づいた褒めるしつけ方を教えるトレーナーが大変増えたと感じます。素晴らしいことですね。
ただ、ちょっと最近感じるのが、科学に忠実になろうとするあまり、日常生活の場面や、一般飼い主が行うにはちょっと難しすぎる内容になっていると感じているのですが。ご意見をお聞かせ下さい。

イアン・ダンバー(以下イ):トレーニングにおいてはフィードバック(褒め声を掛ける)が大事だと思っていますが、例えばクリッカー(元々動物心理学の実験で使われていた道具。カチンという音で、今やっている行動が正しいことを知らせます。)はフィードバックではありません。私はトレーニングがもっと“一般的なもの”になるべきだと考えています。そうすれば小難しい専門用語が無くなってくると思うのです。

○様々なトレーナーの受け入れについて
タ:私はAPDT(イアン先生が創設されたペットドッグトレーナー団体)の会員です。APDTの会員は特定のトレーニング器具を使った、人道的なトレーニングを行う人に限定するよう規約に盛り込まれていますね。日本で様々なトレーニング器具(締め式首輪など)を使っておられる飼い主さんにお会いし、犬具に関する知識が無く困ったことがあったので、プロとして正しい使用法を知っておく必要性を感じました。私は罰による方法を行ったことが無かったのです。そんな時、APDT会員のトレーナーに、様々なトレーニング方法を広く教えているスクール
(注)を紹介され、そこで学びました。(注:一般的には旧式のトレーニング法から新しい科学的なトレーニング法に移るトレーナーが多く、彼らはクロスオーバーと呼ばれていますが、私はまさにその逆を進んだ訳です。因みに私が通ったスクールはTriple Crown Academyといいます。)
私はプロとしてのトレーニング方法の選択に関わらず、全てのトレーナーを広く受け入れて学ぶ機会を与えた方が、考えが変わるトレーナーが増える可能性があるのでよいと思うのですが、いかがでしょうか。

イ:一般的な家庭犬のしつけで相談されるのは、殆どの問題が排泄のしつけなどです。電気ショックの首輪などを使う必要はありませんし、私自身もそれを使う技術はありません。難しいですし、全く意味がありません。

タ:そうですか。私も一般飼い主に必要ではないとわかっています。私も電気ショックの首輪は勉強しただけで実際に犬には使ってはいません。ただプロとしては、使わなくても、正しい使い方の知識を持っておく必要があると考えます。知らなくては悪いといえないと思うのです。ああ、何だかいわなければ良かったかも知れないですね・・・!(苦笑)。確か、イアン先生も昔、罰をベースとしたトレーニングの研究をされていましたよね。 

イ:そうですね。貴方が違うトレーニング方法を学んだのはとても賢明だったと思います。電気ショックの首輪も、遠隔操作などに使えます。正しく使えば問題ありません。ただ、一般の人、トレーナーにとっても相当難しいというだけです。電気ショックの首輪の正しい使い方を本当に学びたければ、マーティン・ディーリー(注;アメリカ在住のイギリス人鳥猟犬トレーナー)から学ぶと良いでしょう。Triple Crown Academy(注を参照)は、革新的で良い学校だと思います。
最近のポジティブトレーナーたちは、あまりに科学を追及する為に、心理学に偏りすぎている気がします。忠告(reprimand)すらしてはいけないというトレーナーもいます。声を掛けるなどの罰も、正しく使えば必ずしも悪いことではないです。APDTも全てのトレーナーを広く受け入れるべきです。
 私は今、自分が25年前にやっていた、原点に戻ろうとしています。新しいビデオを製作中で明日もその撮影があるのですが、これには昔の教え方を内容に盛り込もうとしています。

○日本のこれから
タ:日本のトレーナーとこれからについて、どう思われますか?
イ:日本は非常に優秀なトレーナーが多くいます。日本人は新しい物を海外から取り入れ、更に高めるのが得意です。もう基盤が出来てきていますから、海外の良い情報を学び、より良いトレーニング法が確立できると感じています。日本のトレーナーは独立し、もう羽ばたいていく準備ができたと思っています。

○あとがき 
イアン先生とお話して、先生が犬を一番に思っていて、犬の為に活動されているのだというのが良く伝わってきました。そして、それを証明していたのが、先生の愛犬達です。彼らのあの表情と、ちぎれんばかりの尻尾!本当に幸せそうでした。
実は、私は今までイアン先生は自分の方法を忠実に行うよう求めるような思い込みがありました。でもそれは全くの間違いでした。多分、犬を一番に思うがゆえのことで、科学に基づいた人道的なトレーニング方法を変えていこうとされていて、実際は新しい物を受け入れ、常に挑戦し続ける方です。
その信念と、型にはまらない生き方に共感を受け、何だか昔からの友達を見つけたような錯覚を感じました。私も同じように固定観念に囚われず、自分が受けたいようなトレーニング方法を追及してきたからです。イアン先生は多くの犬のQOLを高めることに貢献された方だと思います。今度は、何の新たなる仕掛けを見せて私たちを驚かせて下さるのでしょうか?楽しみです。どうもありがとうございました。

2006.7.3 イアンダンバー博士訪問記(前編)

皆さんこんにちは。今回はアメリカ在住の獣医行動学者、イアン・ダンバー博士のお宅におじゃましてきました。

ダンバー博士はパピークラス産みの父として知られる、ユニークな経歴の方です。獣医師、研究者でありながら、褒めてしつけるトレーニングを普及させ、家庭犬のトレーニングに多大なる貢献をしたトレーナーでもあります。

ダンバー博士は本当に型破りな「改革者」です。イギリスで獣医師免許取得後、アメリカのカリフォルニア大学バークレー校の心理学部で10年に渡り、ビーグル犬の雄、雌それぞれの階層社会行動と攻撃性について研究をされています。現在、応用動物行動センター所長で、世界で家庭犬トレーナー向けセミナー等を行っています。従来の力を使った訓練では犬の負担になるので、生後半年以降でないとしつけできないといわれてきたのに対し、彼は社会化を重視したパピークラスの重要性を説き、トレーニングに科学を取り入れた褒めるしつけを広め、世界中に大きな流れを作りました。

イアン先生のお宅はカリフォルニア州バークレーにある、閑静な住宅街にあります。当日は奥様のケリーさんと愛犬・愛猫と共に出迎えて下さいました。イアン先生は、有名人でありながら、常にチャーミングでユーモアの溢れる方です(以下インタビュー内容です)。

高井:本日はお忙しい中、ありがとうございます。イアン先生は、犬のQOLを高めることに貢献されていて、本当に尊敬しています。それでは、いくつか質問にさせて下さい。

○日本の印象について
−イアン先生は何度も来日されていますが、日本のトレーナーや犬に対しどんな印象を受けられましたか?

イアンダンバー(以下「イ」):日本のトレーナーはとても優秀です。とても真面目で熱心です。飼い主も勉強しています。
例えば、アメリカでセミナーを行う時など、セミナーで話した内容を質問されることが多々ありますが、日本ではそういったことがまずありません。そしてあまりに忠実にいわれた事を実行するので、こちらも気をつけないといけません・・!

−日本の犬の飼い方についてどんな印象を受けられましたか?

イ:実際日本の家庭で犬を見たことはありませんが、日本はアメリカのニューヨークなどの都市部と同じような状況で、それ程違いはないと考えています。
家庭犬のしつけはそれ程難しいことではありません。正しく行えば、実に簡単なのです。褒めることをベースにしたしつけは子供から大人まで出来、早く、そして効果的です。

○ ショップでのしつけ
−最近日本のショップで行われるしつけ教室も増えてきました。生体の店頭販売が良くないといわれますが、私個人としては、既にあるショップを否定するのではなく、犬のQOLを高めるように活かしていくべきだと考えています。ショップでのしつけのあり方とその可能性についてご意見をお聞かせ下さい。

イ:犬のしつけは、生後8週間で決まります。犬が14歳という寿命を全うできるかどうかは、この時期の社会化としつけで決まるのです。クレート・トレーニング(ハウスのしつけ)、オモチャをかじること、吠えについてのルールを教えることで、保健所に送られずにすむのです。重要なのは、外見の可愛さではありません。
そこで、私は消費者である飼い主に、こうしたしつけの入った犬か、そうではない犬を飼うかという選択肢があることを知って貰いたいのです。ショップには社会化、トレーニングを行う絶好のチャンスがあります。ショップでも是非トレーニングを行うべきです。

○ K9ゲームの特徴
−7月にK‐9ゲームが開催されますね(詳しくはこちらhttp://pet-dog-training.jp/schesule/index.html。このK-9ゲームの目的とその意義について教えて下さい。

イ:K-9ゲームは、人と犬が楽しくしつけを学べるツールです。ゲームをトレーニングに取り入れる利点は、エネルギーを高め、教室に活気を持たせることがあげられます。K9ゲームではおいで、オスワリ、ロールオーバー(寝転がる)といった内容を楽しみながら競います。例えば、誘惑の多い刺激の中で待てをするといったゲームは、競技会の会場より難易度は高いです。競技会で優秀な成績を収めている犬が負けることも多々あります。

○ パピークラスを通して学ぶこと
イ:私は、子供のいる飼い主を沢山見てきました。その中に子供のしつけが全くできない人がいるので本当に驚いています。犬のしつけが出来なくて子供を育てられる訳がありません!犬のしつけと子供のしつけには実に共通点が沢山あります。そして、子供にとっても、多くの学びの機会があります。他者に交渉すること、我慢すること、フェアになることなどです。私は犬のしつけから本当に多くのことを学びました。これらは学校で教えられないものです。

タ:全く共感です!私も同じように、子供時代、全ては学校ではなく犬から学びました。しつけを通して犬の立場を考えるということで、弱者を思いやる気持ちを学ぶきっかけになると信じています。

<次号に続く>

2006.6.16 アメリカのドッグパーク

今回はアメリカ、カリフォルニアにあるドッグパークのご紹介をします。日本でも最近増えてきたドッグランですが、アメリカではドッグパークとも呼ばれます。アメリカのドッグパークの殆どは公共の物で、使用料は無料です。ドッグパークにも色々と種類があり、街にあるフェンスで囲われた、いわゆる日本にあるような“ドッグラン”タイプの物、そして国立公園の中で犬が入れる公園となっているドッグパーク、などがあります。

ドッグパークの始まり
初めて公園にドッグパークが出来たのは、1985年カリフォルニア州バークレ市にある、Ohlone Parkです。オフリードで教える、シリウス・パピートレーニングという子犬のしつけ教室に参加していた一愛犬家が中心となって作ったものだそうです。ここを初めとして世界にドッグランが広がった訳です。こうしたドッグランには住宅街に設置された物もあり、開園時間、週末の夜などは静かにする時間(クワイエット・アワー)も設けられています。

サンフランシスコ湾を一望できるドッグパーク
一方、こちらはサンフランシスコ湾に面した、国立公園内にあるドッグパークです。天気の良い日は岸壁から絶景を楽しむことが出来ます。遊歩道が長く続いており、多くの愛犬家達がリードを放して遊ばせています。地面が砂なので愛犬を思い切り走らせることができます。運が良ければ鯨が見えることもあります。

【犬用水飲み場】
公園の蛇口で直接犬に水を飲ませる事が問題になっていますが、ここでは犬用の水のみ器や蛇口が用意されています。

トイレ袋】
この公園ではマナー袋とゴミ箱が常備されていて飼い主がフンの始末をするように工夫されています。税金でフン袋を用意することには賛否両論あるかも知れませんが、アメリカの市民には街中ではフンの処理をしても、野山では意識の低い人も多いので、既に処理袋を用意しておくというのは一つの方法かも知れません。

【ドッグパークで犬を遊ばせる為に必要なしつけと管理】
犬が沢山集まるドッグパークでは、当然トラブルも起こり得ます。犬をオフリードで遊ばせる為には、トレーニングをしておくことが大前提になります。

この公園では沢山のプレイグループ(トレーナーが犬を預かり、遊ばせるグループ)が犬を連れてきています。犬ははぐれることなく見事に群れに付いてきます。柵があるとはいえ、絶壁もあり、週末は沢山の犬が集まるので愛犬には常に目を配っておくことが大切です。

サンフランシスコでも以前は犬を放せていた公園が、現在はトラブルが起こった為、リード付きになった所もあります。今後も犬の受け入れを継続させる為には、愛犬家一人ひとりの注意とマナーが大事ですね。

2006.5.30 サンフランシスコ・アニマルケア・アンド・コントロール(ACC)

前回お伝えしたサンフランシスコSPCAの向かいにあるのがここACC(animal care and control)です。このシェルターは日本で言う保健所に近いもので、公共の施設です。

民間と公共との違いがあるとはいえ、この2つのシェルターが隣接し、協力体制を持っていることはアメリカでもかなり珍しいケースです。

○活動内容
ACCは全国にあり、各施設によって内容は大きく異なります。主に犬、猫、鶏、兎、エキゾチックアニマルなどを扱い、野生動物の保護・譲渡、ワクチン接種、動物感染症の予防、犬猫の登録、地元ボランティアの育成や、保護活動を行っています。スタッフ数は決して多くはなく、獣医とテクニシャンはそれぞれ1名ずつしかいません。活動の多くはボランティアによって行われています。

○アニマル・コップ(動物虐待のパトロール)
サンフランシスコACC内のアニマルコップは動物のテレビ番組で取り上げられ、全米中に知られています。アニマルコップはACCの活動の主幹の一つで、10人のインベスティゲーター(調査官)と警察官がおり、闘犬の通報や、交渉事故、虐待の取り締まり、動物の救助など様々な活動を行っています。アニマルコップはシェルター内と警察署内にある場合があります。日本では、動物は飼い主の所有物という認識がまだ強く、なかなか通報が出来ないケースが多いので、専門の調査官がいるのはとても良い事だと思います。日本でも要求の声が高まっています。

○異なるポリシーのシェルターにおける協力体制 
「No Kill」とは譲渡可能な犬の処分をしないというスローガンを言います。捨て犬・猫の処分は出来ることなら避けたいと思うのは、皆同じです。ところが、No Killであっても全ての捨て犬・捨て猫を処分せずに救うことは物理的にほぼ不可能といえるでしょう。

ACCは譲渡可能な犬の殺処分はしないというポリシーをもっています。しかし全ての犬を受け入れる為、譲渡の難しい個体は安楽死も行っています。一方、SF/SPCAはNo Killを掲げています。それが出来るのは、受け入れの際に譲渡の可能性の高い犬を選んでいるからです。つまり、残りはACCなど他の殺処分を行うシェルターに送られる事があるので、間接的には安楽死をしていることになるかもしれません。そしてNo Killとはいっても、受け入れた犬にひどい問題行動や治らない病気などがあり譲渡が難しい場合には安楽死もします。

No Killに関しては賛否両論があります。安楽死を行うシェルターは印象が悪くなり、No Killシェルターの方により多くの寄付金が流れてしまうという可能性もあります。No Killシェルターは長期滞在犬を増やすので、犬にとっても、また施設の保護数も減るので良くないという意見もあります。こうした違いを越えて、なぜ両者がうまく協力しあっているかというと、それぞれの施設がお互い役割分担をして、協調して活動しているからだといえます。

例えば、SPCAは去年、ACCから2,277匹もの犬猫の譲渡を引き受けています。収容するスペースが足りなくなる場合があるからです。また、資金不足などで行動専門家が置けない時は、SPCAが問題犬のリハビリなどをサポートします。ACCは市の財源で運営されているので、経費節減をされると苦しい状況に置かれる為、それをSPCAが資金面と技術面からサポートしているのです(行政の施設が寄付を受けるとは、日本では信じられないことですね)。一方、ACCは正しい飼育を推進し、動物虐待のパトロールを行っています。両者共に助け合いながら、同じ目標に向かって活動しています。
このように、動物保護には様々な考え方と活動があります。シェルター同士が同じ目標に向かってネットワークと協力体制を作り、地域が一丸となって運営していく必要があると感じました。

2006.5.2 サンフランシスコ動物虐待防止協会(SF/SPCA)

今回は、前回レポートした聴導犬協会の母体となる、サンフランシスコSPCAについてお伝えします。

皆さんはアニマル・シェルターをご存知ですか?日本でいう保健所とは違い、捨て犬を保護して里親を探す施設のことです。日本にはどんな保護組織が求められているのかアメリカの例を元に、皆さんと一緒に考えてみたいと思います。

○SPCA(動物虐待防止協会)の成り立ち
SPCAは1824年、今から170年以上前にイギリスで王立動物虐待防止協会(RSPCA)として生まれたのが始まりです。その後、アメリカに渡り、今では全米に各拠点があり、それぞれが独立して活動しています。各団体によりポリシー、活動内容は様々です。今回レポートするSF/SPCAは民間の動物保護団体で、No-Kill(殺処分をしない)というポリシーを掲げています。

○活動内容
SF/SPCAは保護団体でありながら、多方面に渡った活動を行っています。それらは犬猫の譲渡/付属動物病院での地域の獣医療と避妊・去勢手術/聴導犬育成/青少年への人道教育/しつけ教室の運営/野良猫の世話/アニマル・アシステッド・セラピーの7つに大きく分けられます。

○組織の規模
この施設は全米でも有数のマンモスシェルターで、スタッフは約150名、ボランティアが約900名、2005年度は猫2,539、犬759匹を譲渡し、避妊去勢手術は6533匹施しています。非常に大きな財源と影響力を持ち、まるで企業の様です。広報活動も盛んで、地元でもよく知られています。

○施設の様子
SF/SPCAには、犬猫の譲渡センター、聴導犬センター、付属動物病院があります。犬猫の施設というと臭いを心配される方もいらっしゃるかもしれませんが、殆ど無臭です。換気の設備が整っており、床も傾斜のついたタイル張りで清掃がしやすくなっています。犬舎はガラス張りで、犬が良く見えるようになっています。譲渡センターの部屋は密閉されていて、吠え声は気になりません。猫舎では、猫が一室に一、二頭ずつ収容されており、部屋には鳥などの映像が流れているテレビ、ソファー、キャットタワーなどがあります。贅沢なようにも思えますが、これはリラックスさせると同時に、家に近い環境を作ることで譲渡後の生活へのリハビリも兼ねているのです。

○譲渡される犬について
日本の保健所では子犬しか譲渡されない所もありますが、SPCAでは子犬よりもしつけの手間がかからない、成犬の方が飼いやすいと説明し、多くの成犬が譲渡されています。全ての犬に性格の判定テストが行われ、適格な犬だけが譲渡セクションに配置されます。里親の適性にあった犬が譲渡されるように工夫されています。

○SF/SPCAの成功の秘訣とは
多くのシェルターが存在するアメリカの中でもSF/SPCAは最も成功したシェルターの一つです。その秘訣は、第一に避妊去勢手術を施し、保護受け入れ数を減らしたことです。これは単に今いる捨て犬を譲渡するという役割だけでなく、未来の捨て犬を減らすという重要な役割も果たしています。第二にリハビリトレーニングやフォスター制度(保護動物の一時預かり)を通じ、譲渡しやすくしていること、第三に公共のシェルターと協力体制を取り、SPCAが譲渡センターとしての機能を徹底させていること、などがあげられます。

○シェルターの先を見越して
日本は一部の方が個人レベルで保護をしている実情があります。個人での保護には持続性や資金にも限界があるので、シェルターが求められていると思われます。しかし、日本はこうした海外の前例を見ながら、シェルターが出来た後に起こる問題も見越して動かないといけないと私は考えています。

海外では、こうした素晴らしい施設も出来て、財源もあり、収容頭数も減ってきています。確かにシェルターは沢山の犬を譲渡し、処分数を大幅に減らしましたが、一部では、捨てても殺されないという選択肢が犬を捨てやすくさせる、もしくは気軽に里親になる事で、犬が里親とシェルター間を何度も往復する、といった問題を引き起こす可能性も否めません。

多くの場合、保護する側は殺処分寸前の動物たちを目の前にして、世話に明け暮れ、情報収集や飼い主教育にまで手が回らないのではないかと思います。殆どの犬猫は問題行動が原因で持ち込まれます。ご存知の通り、犬は一度人との絆を作ったら二度と忘れない動物で、何度も飼い主が変わるのは非常に酷なことです。また猫であっても頻繁な環境の変化はストレスです。シェルターが出来る前に、まずは捨てさせないよう、適格なアドバイスを与える場となる、そして譲渡を急がず、里親希望者にはあくまで厳しい審査をすべきではないかと私は感じました。

いかがでしたか。次回は公共のシェルターであるAnimal Care and Control(ACC)についてご案内したいと思います。

2006.4.17 サンフランシスコ動物虐待防止協会(SPCA)
ヒアリングドッグ(聴導犬)育成プログラム

初めまして。今回から連載をさせて頂きます、高井牧です。

トレーナーであり、一愛犬家でもある立場から、海外情報を様々な角度から見て、現場の声が伝わるようなレポートをお送りしたいと思っています。

さて、今回はアメリカサンフランシスコ動物虐待防止協会(SPCA)の聴導犬育成(ヒアリングドッグ)プログラムについてレポートします。

サンフランシスコSPCAはアメリカでも有数の大規模な動物保護施設の一つです。大きな施設の中の入り組んだ階段を登っていった一室に、ここ、ヒアリングドッグセンターのオフィスがあります。この施設は1971年に建てられ、運営は一般の遺産などの寄付から成り立っています。トレーナーのフランシスさんはにこやかに出迎えて下さいました。

このトレーニング施設には3人の常勤トレーナーと社会化の為のボランティアが活動しています。年間約30頭もの犬を育て、過去30年で800頭もの犬を輩出しました。現在は15頭の犬がトレーニングをしています。パソコンのある部屋とトレーニングルームがあり、ちょっとした事務所といった広さでしょうか。とても、多くの犬を輩出している施設には見えません。

○どんな犬がなれるの?
この施設の候補犬は、殆ど保護施設から選ばれます。捨てられるような犬がそんな優秀な犬になるなんて、驚かれる方も多いことでしょう。多くの場合、活発で家庭で持て余すような犬が連れてこられるのです。このような犬は、仕事を与えられると穏やかになるといいます。一部の施設ではこうした一般家庭では飼い切れないような素質のある犬を寄付する制度もあるようです。この施設ではそうした犬は例外的にのみ認められ、基本的にはシェルターからの犬でまかなっています。

犬の選定基準は、活動的であること、食べ物が好きであること、人が好きであること、社会性の面でも、様々な環境に対しても自信があること、性格が優しいこと、仕事を成し遂げる為に“戦う”素質があること−ストレスに対し回復能力が高く、痛くても、怖くても諦めないたくましさを持っていることだそうです。

最初に見せていただいたミニチュアプードル君は、一般的にみられるような抱き犬とは全く違い、ぴょんぴょんと活発で体格もがっしりしていて、とにかく逞しいのです。少しくらい大きな音を立てても、一瞬反応はしますが、すぐに回復してトレーニングを続けることができます。怖い思いをした場所を避けたりなどしないのです。

犬のストレス耐性は、衝撃に対する反応ではなく、その後の回復能力によって計ることができます。ストレス耐性の高い個体は、ストレスの「閾値が高い」と表現しますが、それは、ストレスに対する反応を起こすまでのボーダーラインが高いということで、ストレス容量がとても大きく、自信があるといえます。犬種で多いのは、プードル、チワワ、パグ、ボストンテリアなどで、シェパード犬などのガードドッグはあまり使わないのだそうです。

○ トレーニング方法
トレーニングは食べ物を使った褒めるトレーニング方法のみで教えられ、罰は用いません。基本的に犬は、食べ物を使ってドアベル、目覚まし時計、タイマー、火災報知機など特定の音に対して反応するように訓練されます。音を鳴らしてオヤツを与えることをひたすら繰り返し、音=オヤツと教えます。
それを学習したら、次は、音源から離して音を鳴らし、音源でオヤツを与えます。こうすると、音源に向かうようになります。そして最終的には、音が鳴ると使用者のところへいって知らせ、音源の所へ行くことで伝えるようにするという訳です。

こうしたトレーニングを段階を通して何百回と繰り返して教えていきます。この他、吠える、飛びつくなどといった問題行動を抱えている犬も多いので、その修正も並行して行います。

○良かったこと
ヒアリングドッグプログラムを見て、トレーニング方法が、トレーナーは勿論、ユーザーにとってもシンプルで分かりやすくまとめてあると感じました。

「トレーニング内容は本当に簡単なのだ」、とフランシスさんは言います。

トレーナーは、トレーニングについてはつい情熱的になり、多くのことを教えてしまいがちになってしまうことも多いようですが、ここまで単純に教えることができるのか、と驚きました。一般の犬のトレーニングについてよく知らないユーザーがトレーニングをするのだから、シンプルであるべきです。

その他、凄く良いと思ったのは、犬が忘れても直ぐに戻って一日で修正して自宅に戻すことができるという制度です。ユーザーの方は、犬が言うことを聞かなくなると、自分の育て方が悪かったのか、犬を戻されてしまうのではないか、と不安になりがちで相談できないと聞いたことがあります。

また、盲導犬は聴導犬と違い、独自の繁殖システムから選ばれます。その中でも盲導犬になる犬は半分に満たないと聞きます。そうした歴史があるから当たり前に感じますが、捨て犬が盲導犬になる事もあればよいのに、と思いました。

そして何より、気さくなスタッフの方々ばかりで、組織がとてもオープンな印象を受けたのも良かったです。このような施設が、日本でももっと増えて欲しいと思います。

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